THE Fatal Believer 解釈
『THE FATAL BELIEVER』
激しい中にも、伸びやかなメロディのサビが耳に残る。 私には歌の主人公が“感情任せに狂いながらも、何処かで精一杯理性を保とうとする葛藤”が、見え隠れしているように思います。 その葛藤が、 “お前が欲しい”“愛してくれ” の言葉に表れている。
この曲の次が 『Agitated Screams of Maggots』 葛藤も迷いも何もかも吹き飛んで、奪われた分の落とし前を払わせる為の復讐へと繰り出す、と言ったところか。
__見えてるか?噴き出した漆黒の大地、沸いて出た、偽証、偽善、最高だろ?__ __I've been tainted You are stunning and I just want you__
(漆黒の大地=腐った屍の山。自分達の罪を擦りつける為に犠牲になった屍の山は偽善と偽証の証だ。最高だろ?) (そんな惨状を少しでも忘れようと俺は薬に手を出して穢れてしまった。だが、お前は純粋なままだ。素晴らしい。お前が欲しい。)
屍の山は戦争の惨状を表しているのようにも思えますが、自分には黒人リンチや魔女狩りを連想しました。
__進化は退化に溺れて__
(進化=優生思想,退化=無自覚の罪)
__悲しい程、情熱が今狂いそう__
(優生思想を謳う人達は、罪の擦り付け合いで、お互いの足を引っ張ってる。殺意にも似た正義感が暴走しそうだ。)
__Please grant me my small wish 骨の髄まで愛してくれ__
(自分達が如何に優れているかばかりに心が囚われて、差別と迫害の犠牲が積み重なった世界では、愛は手に入らない。愛に飢えるのも、当然です。)
と、こんな感じでしょうか。
この頃の京さんは、
“殺意にも似た激しい感情こそ純粋な心を見出だせるのであると、模索、追及していたのだろう。”
海外公演も本格化し、苦汁を舐める想いもしてきたと思う。 「今更何かに影響を受けて、バンドがゴロッと変わる事はない」と断言しつつも、バンド活動に影響を与えなくても、作品に飢えてる感情が顕著に現れてる。
海外に行けば(少なからず)差別感情を肌で感じる事もあっただろうし、決して穏やかな、守られた雰囲気での巡業ではなかったと思う。
差別、思想、宗教、歴史こそが人間の心に根差した“痛み”。 その痛みに注目をし出す切っ掛けにもなったのではないだろうか、と憶測する。